「こうもり」三題

Last-modified: Sat, 02 Feb 2008 14:17:47 JST (3967d)

その1 フォルクスオーパー -12.2

 待望の「こうもり」を見た。11月29日の「魔笛」と合わせて、週にオペラ2つは贅沢だと思うが、2度とはないだろう豪華な取り合わせだ。

 序曲が始まった途端にジーンときた。悲劇でもないのにジーンは表現がまずいかも知れないが、まさにジーンだった。何年前のものか記憶にないが、ベータのテープだからかなり前の物で、自宅で録画したフォルクスオーパーの東京公演のヴィデオを繰り返し見ながら、いつの日かこれをヴィーンのフォルクスオーパーで見たいと思っていた、その夢が果たせたのだから、ジーンで許して貰おう。

 これこそ生っ粋のヴィーンの音楽だ。地下鉄U4のケッテンブリュッケの駅の近くに建っている、アン・デア・ヴィーン劇場で初演された曲。それから120年の間に、ヴィーンだけでもいったい何度上演された曲なのだろうか。まさに伝統に磨き抜かれた演出であり演技であり演奏だと感じる。ヴィーンの人なら誰でも知っているだろう「こうもり」を見せて、白けさせずに見せるだけでも大変な努力が必要だと思うのだが、見事に笑わせ、大喝采させる凄さ。「魔笛」以上にそれを痛感した。

その2 自宅のテレビで -12.31

 シュターツオーパーでは通常、オペレッタはやらない。年末年始の「こうもり」は唯一の例外なのである。この「こうもり」のチケットを入手するのは非常に困難で、料金も法外に高いらしい。法外と感じるかどうかはその人の収入にもよるのだろうが、年収300万にも満たない年金生活者の私としては法外に高いというしかなかろう。

 ついでだが、ムジークフェラインで行われるヴィーンフィルのニューイヤーコンサートの料金も相当なもののようで、「今日あたりで20万円くらいでしょうか」というダフ屋の言葉をかなり前に聞いて、これもテレビで良いや、とあっさり諦めた。

 そんなわけで、『大晦日』の項にあるようにテレビで見た。1980年のもので、アデーレをルチア・ポップが、ロザリンデをグルベローヴァが演じていた。

その3 再びフォルクスオーパーで -6.4

 フォルクスオーパーで、2回目の「こうもり」を見た。年末にテレビで見たシュターツオーパーのものを含めると、ヴィーンに来てから3度目ということになる。

 何度見ても楽しい。そしてだんだんと楽しさが増してくる。その楽しさの主な原因は、やはり言葉だろう。基本的なセリフはかなり聞き取れるようになった。ギャグやアドリヴとなるとそうもいかないが、幾らかはこちらの人と時間差なしに分かる時もある。

 全体的には前回よりも今日の方が出来が良かったのではないか。配役がかなり代わっていて、前回のアルフレッド役が今日はアイゼンシュタインをやった。アデーレも代わっていたような気がするが、これは前回のプログラムを確かめてみないとはっきりしない。「こうもり」に関しては装置もシュターツオーパーに劣らない立派なもので、オケの演奏も不思議なくらい俄然上手くなる。

 フォルクスオーパーとは今日でお別れ、この劇場の素晴らしい思い出を持ち帰るためにも、今日の「こうもり」を最後にして良かったと思う。例の案内係の人の奥さんは今日も来ていた。彼女も今日の出来は良かったという感想だった。