「エリザベス」-2. 17

Last-modified: Tue, 20 Jul 2010 11:30:45 JST (2833d)

 アン・デア・ヴィーン劇場で、「エリザベス」を見た。この劇場は歴史的な意味だけでなく、あらゆる点で凄い劇場だ。大半のメンバーが日本への引っ越し公演をしていたシュターツオーパーの改装中、この劇場で、残留組のメンバーによる「コジ・ファン・トゥッテ」が上演されていた理由が、良く理解出来た。

 何よりも、舞台のセリや回転の装置が凄い。舞台のほぼ全面が3面に分かれたセリになり、それぞれが中心から凹凸に折れ曲がる。舞台そのものが2重に回転もし、舞台の上にしつらえられた装置も自在に回転する。吊りの装置や照明器具も大変な数だろう。

 現代のオペレッタと言えば良いのかミュージカルと言う方が良いのか、この種の作品をまともに見たのはこれが初めてなので他との比較はできないが、作品としても素晴らしいものだと思う。それぞれの歌い手がオペラでも歌えそうなほど素晴らしい声の持ち主で、表現力にも優れている。

 ヴィーンでプロの演奏者として活躍している人の数は一体どれほどなのか、途方もない奥深さを感じる。それぞれのシーンが終わる度の黄色い声は宝塚に通じるものがある。いつから続演されているのか、もう幾度も通って来ている女の子がかなり居るようだ。特に、Der Tod(死)役の男性のフアンが多いらしい。マスクも良いが歌も演技も素晴らしく、女性フアンが多いのは当然だろう。

 エリザベス皇妃役の女性は、メーキャップにもよるのだろうが、まさに良く似ている。額縁から抜け出してくるシーンがあったが、シェーンブルン宮殿にある絵の通りで、一瞬錯覚を起こしそうになる程よく似ていた。観客は白人ばかりで東洋人も見掛けなかった。

 観客の服装などは旅行客が目立たないだけ、むしろシュターツオーパーよりも盛装が多く、この劇場の格式の高さを強く感じさせた。オペラ、演奏会、演劇など、数多い会場で毎晩どれほどの人がそれぞれの好みの催しを楽しんでいることか。演ずる側のメニューも多彩だが、享受する側の胃袋も凄いと思う。

 オペラよりもドイツ語が良く聞き取れた。エリザベスについて幾らか知っていたからでもあるのだろうが、今日は各場面が殆ど理解できて嬉しかった。当然のことだが、ヴィーンの人は歴史的にも総てを知っているわけで、ドラマの展開もだが、それぞれの配役がどう演ずるかにも強い興味を持っていることだろう。実在のエリザベス皇妃へのヴィーンの人たちの敬慕の念をしみじみ感じたと同時に、輝かしい王朝文化が今に息づいている街としてのヴィーンの存在感がひしひしと胸に迫った。