アン・デア・ヴィーン劇場

Last-modified: Sat, 17 Jul 2010 15:00:34 JST (3071d)

 地下鉄の4号線(U4)でカールスプラッツから西方面に向かうと、次の駅がケッテンブリュッケンガッセ(強いて訳せば「ケッテン橋通り」)である。降りると直ぐに大きな市場(ナッシュマルクト)が中心部に向かって伸びているが、アン・デア・ヴィーン劇場はこのナッシュマルクトを見渡す位置に、道一つ隔てて建っている。

 『ヴィーン川のほとりの劇場』という名のこの劇場は、由緒ある有名な劇場で、ベートーヴェンの「フィデリオ」や J. シュトラウスの「こうもり」もこの劇場で初演されたのだそうだが、1994年(私が行っていた年)に国立歌劇場(シュターツオーパー)が改装のため閉館していた期間には、日本公演に参加しなかったシュターツオーパーのメンバーで、モーツァルトの「コジ・ファン・トゥッテ」がこの劇場で上演されていた。

 従来、モーツァルトの「魔笛」が初演されたのもこの『アン・デア・ヴィーン劇場』だと伝えられてきて、日本の音楽関係の案内書にもそう書いてあるものがあるのだが、これは間違いである。「魔笛」が初演されたのはこの劇場ではなく、似た名前の、アウフ・デア・ヴィーデン劇場なのである。

 ヴィーン市の4区、およそこの辺りにあっただろうといわれる場所に、今は『モーツァルトの泉』という名の小さな噴水があって、その場所を『モーツァルト広場』と呼んでいるのだが、劇場そのものは戦災で失われて痕跡もない。初演されたアウフ・デア・ヴィーデン劇場から移って現存するこの『アン・デア・ヴィーン劇場』で上演が続けられたのは、モーツァルトの死後のことである。

 この劇場の元の正面入口に当たるところ(現在の右側面)の上部には、魔笛の主要な登場人物パパゲーノなどの彫像が誇らしげに載っていて、関係の深さを物語っている。またこの劇場の雰囲気などは、「ヴィーン日記抄」の「エリザベス」の項で触れている。