モーツァルト・アーカイブの嘘

Last-modified: Thu, 22 Jul 2010 08:56:05 JST (2888d)

 数年前に買った、「モーツァルト音引き事典」と銘打ったこのCDーROMの中には、「もし、モーツァルトの全作品をすっかり聴こうとすると、1日8時間かけても約4年もかかります」という恐ろしい文章がある。「イントロ・リスニング」という、モーツァルトの全作品の冒頭を一気に聴いてみようというコーナーのうたい文句なのである。引用した文章を誰が書いたかは示されていないが、責任は、監修者のE氏と出版社にある。

 このアーカイブは同じ出版社の「モーツァルト全集」に準拠していると明示されているが、その全集は全15巻+別巻1のそれぞれに平均12枚のCDが収められており、モーツァルト以外の作曲家の作品が多く含まれている別巻を一応除外すれば、約180枚のCDで成り立っている。

 1日3枚のCDを聞くことはそれほど困難ではないから毎日続けて聞いたとすると、1ヶ月で90枚、2ヶ月で180枚が聞ける計算になる。このCD全集はモーツァルトの総ての作品を収録するのが謳い文句だったから、この180枚のCDを聞くことはモーツァルトのほぼ全部の作品を聞くことになる筈なのである。但し此処では、『断片』などの未完成曲の一部については除外する。

 3枚のCDを聞くのに要する時間はコーヒータイムを含めても4時間くらいだろうから、冒頭の文章にあるように1日8時間かけたとすれば、1ヶ月程度でほぼ全作品を聞き終えられる計算になるのである。私自身の経験から言っても、かなり真面目に聞いたと記憶している2005年あたりは、小学館の180枚以外のCDも含めて、モーツァルトのほぼ総ての曲を年間6回は楽譜を見ながら聞いているのである。

 1日3枚聞けば60日で180枚聞ける筈なのに、1日8時間かけても約4年かかるとはどういう計算なのだろうか。これは明らかに「嘘」である。この嘘が何に起因するのかについては此処では触れないが、『蟹の翁の呟き』の項あたりで、一度、ぶつぶつ言ってみたい気はしている。