最初期の作品 教会音楽

Last-modified: Fri, 23 Jul 2010 11:05:40 JST (2887d)

 この項には、5曲の教会音楽と2曲のミサ曲が含まれる。宗教音楽と呼ぶ方が一般的な分類だろうが、ここではオラトリオを別項に立てたので教会音楽とした。

教会音楽小品 <K20、K33、K34、K47、K47b>

K20.gif

 K20の ”God is our refuge” はわずか23小節の小曲だが、モーツァルトの全作品で唯一の、『英語の歌詞による曲』である。原詩はマルチン・ルター(Martin Luther)で、彼自身が作曲もした、日本語では「神はわがやぐら、わがつよき盾」と歌い出される有名な賛美歌である。当然ながら本来はドイツ語なのだが、モーツァルトは英語のテキストに依っている。1765年7月にロンドンで作曲された、ト短調3/2拍子の、無伴奏混声4部合唱曲である。

K33.gif

 モーツァルトは通作した17曲のミサ曲の他に、幾つかの単独の『キリエ』章を残しているが、このK33はその最初のものである。作曲場所はパリ、日付は1766年6月12日になっており、ラルゲットでヘ長調、3/4拍子42小節の佳品である。

K34.gif

 K34の<Scande coeli limina>「天の閾にまで登りゆけ」は、3年余にわたった西方への大旅行の最後、スイスを経由してザルツブルクに帰着する直前、バイエルンのゼーオン修道院で依頼を受け、直ぐにその場で作曲したと伝えられる作品である。曲は2つの部分から成り立っており、前半は弦楽とオルガンの伴奏による、ハ長調アンダンテ2/4拍子の、ソプラノの為のアリア(79小節)、後半はトランペットとティンパが加わったオーケストラと、同じくハ長調でアレグロ2/2拍子の、混声合唱(75小節)とから成り立っている。

K47.gif

 K47は、アレグロ3/4拍子の<Veni Sancte Spiritus>「聖霊よ来り給え」(95小節)と、プレスト2/4拍子のアレルヤ(103小節)との2部分からなる、それぞれが4部の独唱と合唱、トランペットとティンパニも加わったオーケストラによる華麗な作品である。特に後半のアレルヤの部分での、跳躍進行の多い合唱部分の動きと順次進行のみの独唱部分との対比が鮮明である。作曲されたのは1768年の秋とされているが、5月あるいは6月の可能性もある。いずれにしても、作曲地はヴィーンである。

K47b.gif

 K47bの番号を持つこのオッフェルトリウム<Benedictus sit Deus>「祝福さるべきかな、父なる神」は、私がこの項を書く上での基本資料にしているケッヘル第7版(1965年発行)では、『消失した』<verloren>作品として扱われており譜例も掲載されていないのだが、その後の研究でK117(66a)と同一の曲であることが分かり、次に述べるミサ曲K47aと共に、1768年12月7日、ヴィーンのレンヴェーク通りに現存する孤児院教会で初演された作品であると結論されている。

 曲は3つの部分に分かれており、アレグロ・ハ長調・4/4拍子の合唱(44小節)、アンダンテ・ヘ長調・2/4拍子のソプラノのアリア(96小節)、そして、アレグロ・ハ長調・4/4拍子の2つめの合唱(48小節)とから成り立っている。

ミサ <K47a, K47d>

K47a.gif

 モーツァルトの最初期の作品ということで書いているこの項の中で、私はもう何度か、「とても○才の子供の作品とは思えない」という趣旨の感想を述べているが、その中でも特に強烈にそう感じ、今も聴く度にその印象が深まってくるのが、このK47aのミサ曲ハ短調の冒頭部分なのである。この曲が作曲者自身の指揮で初演されたのは、前項で述べたように1768年の12月7日だが、この時モーツァルトは12才、現在の日本の学齢でいえば小学校の6年生なのである。驚異としか言いようがない。

K47d.gif

 前記のK47aと、この47dと、どちらが早く作曲されたのかは、まだ確定されていないと言うべきだろう。初演された日付けもはっきりしているK47aとは対照的に、このK47dは、いつ作曲され、どんな機会に初演されたのかが分かっていないからである。枝番ではこの曲の方が後になっているにも関わらず、多くの場合、モーツァルトの「ミサ曲第1番」と呼ばれるのは前述のK47aではなく、このK47dの方で、CDの録音順などでもそのように扱われている。

 レンヴェークの孤児院教会で初演された曲としては、前述のK47aのミサ曲、K47bのオッフェルトリウムのほかに、K47cの番号を持つ、「トランペット協奏曲」が記録されてはいるのだが、現在は失われている。幼児の頃、その音を聞かされただけで卒倒したと伝えられているほど嫌いな楽器だったトランペットの為に、モーツァルト少年がどんな協奏曲を書いたのか、ぜひ一度は聴いてみたいものだが、その望みは果たされそうにない。


添付ファイル: fileK47a.gif 492件 [詳細] fileK47b.gif 496件 [詳細] fileK47d.gif 465件 [詳細] fileK47.gif 458件 [詳細] fileK34.gif 482件 [詳細] fileK33.gif 560件 [詳細] fileK20.gif 547件 [詳細]