金魚鉢

Last-modified: Sat, 17 Jul 2010 15:31:39 JST (2837d)

 誰の発想なのかは知らないが、名付け親はどうやら日本人らしい。シュターツオーパーの右脇から地下道を下った辺りは、オーパーパッサージュという名のちょっとした地下街になっているのだが、その中心にあるのが「金魚鉢」という愛称を持つこのカフェーである。

 当然、本当の名前は別にあるに違いないのだが、それは私は知らない。それに、「金魚鉢」というこの愛称、実に良く出来ていると思う。ぐるり周り中ガラス張りなので、中に居る人たちを金魚に見立てるのはごく自然の成り行きだからである。

 1994年頃にはヴィーンにはエアコンはまだあまり普及していなかったのだが、この「金魚鉢」の外側の壁面には、いかにも誇らしげに、「冷房中」と英語で書いてあったのを良く憶えている。ところが1994年の夏はヨーロッパでも大変な暑さで、翌年の1995年の5月あたりに街を歩いていると、あちこちで冷房工事の現場を見た。もしかすると今頃は、ヴィーンでも冷房が当たり前の時代になっているのかも知れない。

 私はここでは、メランジュ以外のものを飲んだ記憶はない。「メランジェ」でも「メランジュ」でも通じるが、30シリング程度のごく普通のミルクコーヒーで、ちょっと座って休憩したいと思った時など、良くここでメランジュを飲んだ。

 ここに座って今日の探訪先を考えたりしながら、外を行き交う人たちを見ていると、ヴィーンの人はゆったりしているなと思う。背が高いだけに歩幅は広いから結構先に進んではいるのだが、東京や大阪の人間のような、せかせかチョコマカした忙しげな感じはないから、何となくのんびり歩いているような気がするのである。